世界の真実に近づくための
エマニュエル・トッド入門講座

And all must love the human form,
In heathen, Turk, or Jew;
Where Mercy, Love, and Pity dwell,
There God is dwelling, too.

だから、みな人間のかたちをしたものを愛そう
異教徒、トルコ人、ユダヤ人
彼らのうちには慈悲、愛、憐れみが宿り、
神もまた宿っている


William Blake, The Divine Image, 1789から抜粋
トッド『シャルリとは誰か?』(文春新書、2016)冒頭で引用(訳は辰井)

最近の記事

トッド入門の入門(初めての方に)

トッド入門講座

「トッド後」の近代史
(3-③)おかねが変えた世界

はじめに イギリスの街角で生まれた「民間の商人が発行する、広域的掠奪の資本としてのおかね」。 今回は、このおかねが国家の中枢に入り込み、世界を変えていく様子をお届けします。 近代国家とは何か。資本主義とは何か。 核心に近 […]

「トッド後」の近代史
(3-②)イギリスで生まれたおかねの仕組み

はじめに:イギリスで生まれるおかねの条件 いよいよイギリスです。 前回、「近代」以前の3種のおかねの例を見ていただきました。 「官の権威と信用(=国の経済力)に基づく、国の商業活動を支えるためのおかね」(中華帝国(宋)) […]

「トッド後」の近代史
(3-①)近代以前のおかねの仕組み

はじめに:おかねの仕組みが問題だ 現在、私たちは、おかねがなければ生きていけない世界に暮らしています。 普通にお米を作り魚を取って近隣の住民に供給しているだけではロクに食べてもいけず、次々と新しい商品やサービスを開発し、 […]

「トッド後」の近代史
(2-②)イギリス帝国のふるまいと経済

インド洋でのイギリス 時代は再び1600年前後に戻ります。 イギリスが持っていたものは、毛織物、そして主にスペイン経由でヨーロッパに入ってくる新大陸の銀。 当時、アジアからの物産の購入に充てるためには、イングランド産の毛 […]

「トッド後」の近代史
(2-①)ヨーロッパのふるまい

はじめに 世界の中央に進出してきた「識字化した核家族」は、そのふるまいによって、世界の進む方向性をどう変えたのか。今回は、共同体家族を中心に営まれてきた「共存共栄の海」で、ヨーロッパが何をして、世界をどのように変えたかを […]

「トッド後」の近代史
(1)近代以前の世界

はじめに 「自由で民主的で豊かな社会を目指して進んできたはずなのに、どうしてこんなことになってしまったのか」という問いから、私の探究は始まりました(2020年頃)。 近代化の契機は核家族の識字化であったことはわかった。「 […]

アメリカ I
-差別と教育とデモクラシー(下)-

  アメリカ社会に何が起きたのか? 前回からの続きです。 アメリカ社会における「人種主義のその後」について、ここまで確認できたことをまとめます。 以上の事実は、アメリカ社会の心性に何が起きたことを表しているのでしょうか? […]

アメリカ I
-差別と教育とデモクラシー(中)-

  前回のおさらい アメリカにおけるデモクラシーの成立と衰退の「なぜ」を問うている「アメリカ I 」。 トッドとともにわれわれが探究していたのは次の2つの問いでした。 問① 平等不在のアメリカになぜデモクラシーが成立した […]

アメリカ I
-差別と教育とデモクラシー(上)-

家族システムとデモクラシー:アメリカの謎 トッドの探究は、「平等の価値を持たないアメリカが、なぜデモクラシーを成立させることができたのか」という問いから始まります。 しかし、私たちにとって、デモクラシーといえばアメリカ、 […]

アメリカの家族システム

  はじめに トッドによれば、現代アメリカの家族システムは「原初的核家族に接近した絶対核家族」です。 その情報だけお持ちいただければ「アメリカ I・II 」をお読みいただくのに支障はありませんが、一応、トッド入門講座なの […]

〈特集〉アメリカ
-予告編-

はじめに 21世紀前半を生き、世界の真実に近づくことを目指す私たちにとって、アメリカほど興味深く、重要な研究対象はありません。 私たちがいまどんな世界に生きていて、どうしてこの世界を生きることになったのか。アメリカという […]

ヨーロッパのキリスト教
(4・完)脱宗教化 

  1 カトリック地域では何が起きたか プロテスタンティズムが直系家族地域に浸透し、絶対核家族地域では「変形」を被っていた頃、プロテスタンティズムを拒否した地域では何が起こっていたのでしょうか。 第2回で書いたように、ド […]

独自研究

生き心地の良い町
-核家族の日本-

「生き心地の良い町」海部町 徳島県に海部町という場所がある(あった)のをご存じだろうか。自治体の合併で現在は徳島県海部郡海陽町の一部となっているが、その中の元「海部町」だった地域のことである(以下単に「海部町」と呼ばせて […]

京都−核家族の都?

  私は、東京下町の出身なので(?)京都という町にはあまりよい印象を抱いていなかった。古都といっても実際には車がガンガン走る近代的な大都会だし「むかし天皇が住んでいたというだけじゃないか」「権威主義」などと思ったりしてい […]

自殺と他殺
ー権威の作用ー

  はじめに トッドは自殺率と他殺率が「反比例する相関関係」にあることを指摘している(『世界の多様性』182頁)。要するに、概して言うと、自殺率が高いところは他殺率が低く、他殺率が高いところは自殺率が低いということだ(下 […]

家族システムとイデオロギーの再解釈

フランス人トッドと日本人の私ー平等マニアと権威マニア トッドはフランスの平等主義核家族地域出身である。「平等」という価値が具体的にどのような形で社会で作用しているのかを肌で理解しているためなのだろう。私から見ると、トッド […]

連載「社会のしくみ」のご案内

  姉妹サイトsatokotatsui.comの方で、連載「社会のしくみ」をはじめました。 トッドの人類学を頭に入れると、国家の誕生、国家の意思決定システム(政治ですね)、政治と宗教の関係、世界情勢‥など、さまざまなこと […]

キューバの謎

キューバは、外婚制共同体家族グループの一員である。ロシア、イタリア中部、中国、ベトナム(の一部)と、見事に共産圏(イタリア中部は共産党が非常に強かった)の地図と重なり、トッドに「家族システムとイデオロギーの相関性」に関す […]

ロシアとウクライナのこと

  はじめに ー 家族システムの理論が教えること 神よ 変えることのできるものについて、 それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。 変えることのできないものについては、 それを受けいれるだけの冷静さを与えた […]

デモ指数:カナダ反ワクチン義務化デモに見る家族システムとデモ

  カナダのトラック運転手による反ワクチン義務化デモは1Freedom Convoy 2020 と呼ぶらしい。1月15日に(アメリカからの)再入国時のワクチンパスポート提示が義務化されたことに抗議して始まった。裁判所の解 […]

内婚と外婚ー日本と韓国

内婚と外婚 エマニュエル・トッドが家族システムの分析に使う変数の一つに「内婚と外婚」というのがある。 近親婚(いとこ婚)を許容するのが「内婚」、許容しないのが「外婚」だが、キリスト教が近親婚を禁じているので、ヨーロッパに […]

トッド用語事典

乳児死亡率

エマニュエル・トッドは人口動態のデータを用いて社会の内側を透視します。なかでも彼が特に重く見ている指標が乳児死亡率です。 1 乳児死亡率とは 乳児死亡率(infant mortality rate)とは、生まれた子どもが […]

移行期危機

  1 移行期危機とは 移行期危機とは、社会が前近代から近代に移行する際に発生する危機的現象のことを指す用語です。 トッドの理論では、近代化の引き金を引くのは識字化です。男性の半数以上が識字化し、物を考え、社会に参加する […]