「トッド後」の近代史
(3-③)おかねが変えた世界
はじめに イギリスの街角で生まれた「民間の商人が発行する、広域的掠奪の資本としてのおかね」。 今回は、このおかねが国家の中枢に入り込み、世界を変えていく様子をお届けします。 近代国家とは何か。資本主義とは何か。 核心に近 […]
「トッド後」の近代史
(3-②)イギリスで生まれたおかねの仕組み
はじめに:イギリスで生まれるおかねの条件 いよいよイギリスです。 前回、「近代」以前の3種のおかねの例を見ていただきました。 「官の権威と信用(=国の経済力)に基づく、国の商業活動を支えるためのおかね」(中華帝国(宋)) […]
「トッド後」の近代史
(3-①)近代以前のおかねの仕組み
はじめに:おかねの仕組みが問題だ 現在、私たちは、おかねがなければ生きていけない世界に暮らしています。 普通にお米を作り魚を取って近隣の住民に供給しているだけではロクに食べてもいけず、次々と新しい商品やサービスを開発し、 […]
「トッド後」の近代史
(2-②)イギリス帝国のふるまいと経済
インド洋でのイギリス 時代は再び1600年前後に戻ります。 イギリスが持っていたものは、毛織物、そして主にスペイン経由でヨーロッパに入ってくる新大陸の銀。 当時、アジアからの物産の購入に充てるためには、イングランド産の毛 […]
「トッド後」の近代史
(2-①)ヨーロッパのふるまい
はじめに 世界の中央に進出してきた「識字化した核家族」は、そのふるまいによって、世界の進む方向性をどう変えたのか。今回は、共同体家族を中心に営まれてきた「共存共栄の海」で、ヨーロッパが何をして、世界をどのように変えたかを […]
「トッド後」の近代史
(1)近代以前の世界
はじめに 「自由で民主的で豊かな社会を目指して進んできたはずなのに、どうしてこんなことになってしまったのか」という問いから、私の探究は始まりました(2020年頃)。 近代化の契機は核家族の識字化であったことはわかった。「 […]
アメリカ I
-差別と教育とデモクラシー(下)-
アメリカ社会に何が起きたのか? 前回からの続きです。 アメリカ社会における「人種主義のその後」について、ここまで確認できたことをまとめます。 以上の事実は、アメリカ社会の心性に何が起きたことを表しているのでしょうか? […]
アメリカ I
-差別と教育とデモクラシー(中)-
前回のおさらい アメリカにおけるデモクラシーの成立と衰退の「なぜ」を問うている「アメリカ I 」。 トッドとともにわれわれが探究していたのは次の2つの問いでした。 問① 平等不在のアメリカになぜデモクラシーが成立した […]
アメリカ I
-差別と教育とデモクラシー(上)-
家族システムとデモクラシー:アメリカの謎 トッドの探究は、「平等の価値を持たないアメリカが、なぜデモクラシーを成立させることができたのか」という問いから始まります。 しかし、私たちにとって、デモクラシーといえばアメリカ、 […]
アメリカの家族システム
はじめに トッドによれば、現代アメリカの家族システムは「原初的核家族に接近した絶対核家族」です。 その情報だけお持ちいただければ「アメリカ I・II 」をお読みいただくのに支障はありませんが、一応、トッド入門講座なの […]
〈特集〉アメリカ
-予告編-
はじめに 21世紀前半を生き、世界の真実に近づくことを目指す私たちにとって、アメリカほど興味深く、重要な研究対象はありません。 私たちがいまどんな世界に生きていて、どうしてこの世界を生きることになったのか。アメリカという […]
ヨーロッパのキリスト教
(4・完)脱宗教化
1 カトリック地域では何が起きたか プロテスタンティズムが直系家族地域に浸透し、絶対核家族地域では「変形」を被っていた頃、プロテスタンティズムを拒否した地域では何が起こっていたのでしょうか。 第2回で書いたように、ド […]
ヨーロッパのキリスト教
(3)イングランドのプロテスタンティズム
はじめに 「イギリスのプロテスタントってよく分からない」とお思いの方は多いと思います(私がそうでした)。 1534 イングランド国教会の分離(ヘンリー8世)1547- プロテスタントの教義を導入(エドワード6世)1553 […]
ヨーロッパのキリスト教
(2)プロテスタンティズムの普及と変形
はじめにー教育、家族システム、宗教システム プロテスタンティズムに対する各地の反応は、基本的に、①文化レベル(識字率)、②家族システム によって決まります。 プロテスタンティズムは、「聖職者に対する異議申立」であり、 […]
ヨーロッパのキリスト教
(1)プロテスタンティズムの登場
はじめにー宗教と家族システム 社会の最基層に位置し、歴史に最も永く深い影響を及ぼすものは家族システムである、というトッドの理論に対しては、「宗教は?」と疑問を持たれる方がいると思います。 「人間を最も深い部分で動かしてき […]
ロシアの外婚制共同体家族はどこから来たのか?ーヨーロッパの共同体家族
中東の内婚制共同体家族、中国の外婚制共同体家族の由来が大体分かると(「家族システムの変遷-国家とイデオロギーの世界史」をご参照ください)、つぎに気になってくるのはロシアです。ロシアは確固たる外婚制共同体家族地域です。その […]
家族システムの変遷
-国家とイデオロギーの世界史-
(6・完)世界の未来
内婚制共同体家族の近代化 (1)アラブの移行期危機 中東には、イランやトルコのように、識字化に始まる近代化の過程をほぼ完了したと見られる地域もありますが、アラブ圏の多くはまだその最中にあります。 したがって、メソ紀5 […]
家族システムの変遷
-国家とイデオロギーの世界史-
(5) 核家族レジームは機能したか
核家族レジームは機能したか 「識字化した核家族」の近代にあって、とりわけ大きな混乱にみまわれた地域。その代表格といえるのは、バルカン半島と中東です。 旧オスマン帝国の領土であったこれらの土地は、覇権が共同体家族から「 […]
家族システムの変遷
-国家とイデオロギーの世界史-
(4)「識字化した核家族」の時代
西欧の家族システム (1)核家族と直系家族の二種類 ユーラシア大陸の中央部の家族システムが「核家族→直系家族→外婚制共同体家族→内婚制共同体家族」へと発展を遂げていた頃、西ヨーロッパはどんな状態であったのでしょうか。 拡 […]
家族システムの変遷
-国家とイデオロギーの世界史-
(3)内婚制共同体家族とオスマン帝国
「アラブ式内婚」という革新 ユーラシア大陸中央部では、メソ紀1000年(前2300年)頃のアッカド帝国以降、バビロニア(バビロン第一王朝)、新アッシリア帝国、アケメネス朝ペルシャなど、多数の「帝国」が生まれました。 ロー […]
家族システムの変遷
-国家とイデオロギーの世界史-
(2)都市国家から「帝国」まで
都市文明のはじまり 「補講 気候と人類」に、最終氷期が終わり間氷期(温暖で安定)に入った頃に農耕が始まったこと(約12000-11000年前)、巨大氷床の融解による海水面の上昇が終わったことで、長期の定住が可能になったこ […]
家族システムの変遷-国家とイデオロギーの世界史 (1)-2 中国の事例
はじめに この講座では、次回以降、ユーラシア大陸の西の中心(中東)とその周辺を舞台に、家族システムの変遷を見ていくのですが、その予行演習として最適なのが、中国の事例です。 中国では、中東と全く同様に、「原初的核家族→ […]
家族システムの変遷
-国家とイデオロギーの世界史-
(1)イントロダクション
はじめに (1)家族システムは「進化」する 家族システムは変化します。しかし、人類が自分の意思で変えられるかというと、変えられない。私たちにできるのは、基本的に、知ること、理解することだけです。 家族システムの変遷は […]
家族システムについてのよくある誤解
*この文章は、家族システムの概念に関する「やや立ち入った解説」です。概要についてはこちらをご覧ください。 「家族システムとは?」 家族システムの分析は、20世紀初頭から、非西欧、非先進社会の成り立ちを知るための人類学 […]
エマニュエル・トッドの道具箱
ー家族システム、教育、人口動態
はじめに エマニュエル・トッドは1976年の著書でソ連崩壊(1991年)を予言して、その名を世に知られるようになりました。 予言はその後も続き、2007年の著書では「アラブの春」(2009年~)を、2014年のインタビュ […]
「異端認定」がもたらしたもの ー 若者の楽観から歴史家の楽観へ
世の中から受けた攻撃について、トッドは、率直に、まだ何も成し遂げていない若い研究者だった自分にとっては、「かなり辛いこと」だったと述べています(『問題は英国ではない、EUなのだ』95-97頁)。 「いったいこの本が何 […]
トッドとマルクス
「トッド・クロニクル(1)」の最後で「マルクスのように」という比喩を使ったのは、トッドには「次代のマルクス」的な面が大いにあるからです。学説は(ある意味では)正反対ですし、トッドは活動家ではない。しかし、二人が歴史( […]
トッド・クロニクル(2)ー大発見とその後
発見前夜 ー 経済中心思想との決別 (1979) 1976年の『最後の転落』の後、トッドは、「ル・モンド」の記者として歴史関係の書評やインタビューなどをこなしながら(『トッド 自身を語る』26頁等)、自由に研究を続けてい […]
トッド・クロニクル(1) 1951ー1976 ー修業時代のトッドー
エマニュエル・トッドは、不思議な研究者です。歴史家、歴史人口学者、家族人類学者などいろいろな肩書きがあって、権威ある出版社から何冊も学術書を出している著名な研究者なのに、大学に所属していない。 同じ知識人でも、思想家やジ […]
補講 気候と人類
さて、この2回の講義で、無事人類は狩猟採集を始め、世界史の教科書に載るところ、トッドの理論の守備範囲にまでたどり着きました。この先の人類史はトッドにお任せすることにして、最後に一つだけ補足です。 現在、私たちの大きな関心 […]
文明以前の人類史(2・完)ー人間はどういう生物かー
前回、恐竜が絶滅して哺乳類の天下になったところで終わりましたので、本日はその続きです。 7 霊長類の祖先は誰?(9000万〜5500万年前) かりに生物の興亡を神様の「実験」と考えると「大きさ」の可能性を試してみたのが恐 […]
文明以前の人類史(1)ー地球が生まれ、恐竜が絶滅するまで
はじめに:2022年の常識 この講座の目的は、タイトル通りに真実を知りたい方々、そして「戦略の練り直し?面白そう!」という能天気な方々に、自分なりに真実を探り、戦略を練り直すのに役立つ「道具」として、エマニュエル・トッド […]
予告編 : トッドの理論はなぜ
「それほどよく知られていない」のか
はじめまして。そうでない方には、こんにちは。辰井聡子といいます。社会科学の研究者です。 この度、web上でエマニュエル・トッド入門講座を開講することにしました。どうぞよろしくお願いします。 この記事は予告編です。講座の趣 […]
Todd Chronicle 人と学問
OUTLINES 概説
BASICS 基礎
家族システムの変遷ー国家とイデオロギーの世界史
SPECIFICS 応用 / 各論
ヨーロッパのキリスト教
(1)プロテスタンティズムの登場
SPECIAL CONTENTS 特別企画