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トッド後の社会科事典

近代

ヨーロッパが世界の中心に躍り出て覇権を握った時代のこと(概ね16世紀ー現代)。

近代より前、文明の進歩は社会の絆(家族システム)の革新とともにあった。家族システムの進歩とは無縁であったヨーロッパが突如文明の中心地となった要因は、全人口における識字率の急激な上昇にある。

先に文明の進歩を経験していた地域では、安定性を志向した社会の構造化の中で、文字の自由な使用が知識人階級に限定される傾向が見られたが、ヨーロッパはそうした制約を持たなかった(ゆるかった)。そのため、精神的・物質的な諸条件が整うと一気に識字率が高まり、文化力が爆発的に開花したのである。

それ以前の文明と深く接続していなかったヨーロッパは、自らが近代に達成した事績のすべてを「進歩」とみなし、覇権の拡大とともにその価値観は全世界に広まった

しかし、実際には、その多くは、かなり単純に、核家族的メンタリティの具現化そのものであり、世界中がそれを模範とすることが妥当であった(る)とは考えられない。

近代以降の社会科学は、近代=ヨーロッパ文明を「進歩」とみなすところから出発している。そのすべてを相対化することが「トッド後」と銘打つ本事典の基本的な視座である。

  • 近代とはヨーロッパが覇権を握った時代のこと
  • 全世界に先駆けての大衆識字化が覇権の根幹。その要因は社会が単純なまま維持されていたこと
  • 近代社会の特徴とされるものは概して核家族メンタリティの具現化そのもの

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